看護師にとって、患者さんとのコミュニケーションは信頼関係を築き、安心できる療養環境を提供するために欠かせないものです。忘れてはならないのが、患者さんへ敬意を払うこと。それでいて、親しみを感じてもらえるようなコミュニケーションを心がけることが重要です。
患者さんと接する上で、まずは「尊重する気持ち」を持つことが基本です。そのためには、あいさつや礼儀はもちろんのこと、普段の言葉遣いも砕けすぎることなく、丁寧な言葉を選ぶようにしましょう。「~してください」よりも「~していただけますでしょうか」といったように、少し柔らかい表現を使うと良いかもしれません。また、患者さんの話を否定するような言葉は、不安や不信感を与えてしまいます。そのため、「でも」「しかし」といった言葉は避け、「おっしゃる通りですね」「分かります」といったように、まずは肯定から入ることを意識しましょう。そのうえで、「もう少し詳しく教えていただけますか?」などと話を広げ、患者さんの真意を丁寧に汲み取ることが大切です。患者さんと話すときは、早口で一方的に話したり、患者さんの反応を無視して話を進めたりすることは避けてください。ゆっくりと話す、適度な間を置く、相づちを打つなど、患者さんの様子を見ながら、会話のペースや声の大きさを調整します。表情も、患者さんの笑顔に笑顔で応える、深刻な表情には真剣な表情で耳を傾けるなど、状況に合わせた態度を心がけた方が良いでしょう。
患者さんとコミュニケーションを取る際には、立ち位置にも気を配ります。最適なポジションは、患者さんの真正面です。相手の顔を見ながら話すことで、表情や反応をしっかりと読み取ることができるでしょう。また、真正面で向き合うことは、患者さんに対して「あなたの話をきちんと聞いていますよ」というメッセージにもなります。反対に、真横に立つことは圧迫感を与え、視線を気にせずほかの作業をしようとしていると誤解されかねません。コミュニケーションに集中するためにも、正面で向き合うのが望ましいです。
医療従事者にとっては当たり前の言葉でも、患者さんにとっては専門用語に聞こえてしまうことがあります。病気や治療に関する説明をする際には専門用語は避け、分かりやすい言葉に置き換えることが大切です。ときには、図やイラストなどを用いるのも効果があるかもしれません。要は、患者さんが安心して質問できる雰囲気を作ることが大事です。
患者さんを名前で呼ぶことは、親近感と安心感を与えるだけでなく、その人自身を尊重しているという意思表示になります。患者さんの名前を覚えることは、相手へのリスペクトを表すだけでなく、患者さん自身が「自分のことを気にかけてくれている」と感じ、声をかけやすい環境にも繋がるでしょう。こうした、看護師の言葉遣いや態度一つで、患者さんの気持ちは大きく変わることがあります。相手を尊重し、親しみを込めたコミュニケーションを心がけることで、患者さんとの信頼関係を築き、より良い看護を提供することが大切です。